第1章

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 空が明るい。もう午後6時になるっていうのに。  だんだんと日が長くなってきて、暑さもどんどんましていって、だけど夏はきらいじゃなくて。とまらない汗とかへばりつく服とか、ブラのくいこみが気になったり、いや、太ってないし、胸が大きくなっただけだし。とにかく、そういうきもち悪さもあるけれど、そういうのもひっくるめて、わたしは夏がきらいじゃない。  たとえば、暮れるまでが長い空とか、先の見えない青とか、むせかえりそうな草の匂いとか、耳をふさぎたくなるほどうるさいセミの声とか、ときおり吹くなまぬるい風とか。風はきもち悪いかな。でも、夏ってかんじ。  好きっていえるほど夏を歓迎はできないけれど、人を殺そうとしているような暑さではあるけれど、どうせなにしても汗をかくなら、なにかしたいなって思える季節。毎年思うだけで特別なことなんてしたことないけれど。  でも夏のこの暑いなかでする勉強は大きらいだ。ただでさえ暑いし汗がきもち悪いしでイライラしてしまうっていうのに、イスに座って机のうえの教科書や問題集を見て、動かしていいのは手と頭だけって、もうこれは拷問ですよごーもん。  まあ、もうだいぶ涼しくなってきたけど、それは昼と比べればってだけで、異常だよこの暑さ。背中とか汗じゃなくて溶けてるんじゃないのこれ。  まだ授業ならしかたないって少しは我慢できるけれど、自主的な勉強となると集中なんてできるわけないよ。こんなだらだらとやってて意味あるのかな。頭に入ってる? わたしの頭に? 疑問を持たざるをえない! ていうか無理じゃない? もう投げだしてもいいんじゃないこれけっこーつづいたよ一週間つづいたよこれでもう期末試験とかばっちりだって。帰りにアイス食べたい。  集中力がきれちゃって明日から試験までの一週間とかがんばれそうにない。そもそも今日からはじめていればこれから一週間をのりこえられたんじゃん。なんで二週間前からこんなに勉強してるんだわたしは。はいそうですバカだからです。  背もたれに寄りかかって、自分の顔がむすっとしてブサイクになっているのを感じながら、目を窓の外にむける。明るいからまだ青空なのかと思ったら、赤みがかってきてる。もう少ししたら、さしこむ光も色を変えるんだ。  ちらりと、顔を外にむけたまま、目だけを横に動かした。
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