第1章

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夏が終わる頃隣の家に、30前後の美人の範疇に入る若い女が、引っ越してきた。 隣と言っても過疎化が進み廃村になった部落から、数キロ山の中に入ったところに住んでいる、世捨て人の俺の家から、数百メートル離れた所に建っているあばら屋にである。 事情を聞くと、天涯孤独の身であり、嫁いだ先の農家で牛馬のようにこき使われ、夫を筆頭に義実家の人間すべてから暴力を受け、逃げ惑い。 幼い頃世話になった、福祉施設の寮母さんに聞いた事があった。 寮母さんの曾祖母が亡くなるまで暮らしていた、廃村になった部落を目指して逃げてきたとの事である。 こんな山奥では、電気どころか水道も無く、プロパンガスの配送もやってもらえない、煮炊きに使用するのは薪だ。 女は当座の間必要な生活物資と、食料は持参していたので、水が湧き出ている沢を教え、冬に備え備蓄している薪を数束融通してやる。 俺は自分の家に戻ると、ドラム缶に水をくみいれ、ドラム缶の下に薪を積み上げ、薪を一睨みして火をつけた。 そう俺は超能力者である。 俺の能力は薪だけでなく、あらゆる物を発火させ、その炎をコントロールする事ができた。 欠点もあり、冷静な時は炎をコントロールできるが、興奮している時発火させると、コントロールする事ができなくなる、という事である。
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