第一章 越して来た女性

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第一章 越して来た女性

綺麗に片付いた部屋である。 一念発起して、この部屋の住人が片付けたのであった。 太郎は、最近買い換えたスマートフォンを触りながら、 話している。 「やれやれ、昨日のせいで筋肉痛かな?風呂にでも入るかな」 「いや、いいよ。そんなの悪いじゃん」 「どんだけ世話焼きなんだよ」 「で、これからどうすんだ?」 「うん、そうだよな。仕方ないよな」 「いいとこ、見つかったらいいよな」 「あ、一緒に行かなくていいのか?」 「まぁ、オレよりは大人だけどさ、心配じゃん」 「うん、わかったよ。いや、礼はいいって」 『ピンボーン!』 「あ」 太郎は、インターホンのボタンを押し、相手を確認した。 女性だ。 「どちら様ですか?」 「隣に越してきました、川添と申します」 「はい、ちょっと待っててください」 インターホンのボタンを放した。 「案外美人だったよ」 「見えてたって? あーはははっ! 笑わすなよ」 「一緒に行くか?なに照れてんだよ、いいのか?」 「わかった、ちょっと待ってて」 太郎は、スマートフォンをテーブルの上においた。 玄関を開けた。 「あ、どうも、五月雨といいます」 「はい、綺麗な苗字ですね」 川添が、表札を見ながら言った。 「名前は太郎なんで、バランスはいいかと」 「うふふふ、あ、ごめんなさい」 上品そうに口に手を当てて小さく笑った。 そして、本当に済まなさそうな顔に変わった。 (いい人そうだな) 「改めまして、川添優樹菜と申します」 「ご丁寧にありがとうございます」 「あの、これ、詰まらないものですが。」 「いえ、ご丁寧にありがとうございます」 「それでは、失礼致します」 「ご苦労様!」 太郎はスマートフォンを手にとった。 「なに? 見てたの?」 「惚れたって!なんで来なかったんだよ!」 「なに言ってんだよ、そんなこと関係ないだろう」 「まだいるかもしれないから、呼んでくるよ」 「え、ほんとにいいのか。まぁいいけど」 「ああ、まだ開いてんだろ?」 「行くのか、うん、気をつけてな」 太郎は、スマートフォンを置いて、 テレビのリモコンを手にした。
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