第1章

3/10
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
軽く朝食をとって仕事に出かけた。 エレベーターを降りてエントランスを出ると外に引っ越し業者のトラックが停まっていた。 引っ越しか…。さして気に止める事もなく会社に向かう。 朝一会議が終わってデスクに戻ると慌ただしく仕事をこなし、気づけばお昼だ。 携帯にお昼に会いたいと梓ちゃんからメールが届いていた。 やべっ!慌てて梓ちゃんに電話をする。 「梓ちゃん?俺。ごめん!メール今見た。」 「あっっ、尚くん、ごめんね。忙しいのに」 「いいよ。ランチ行く?」 「うん。」 「じゃあ、噴水で。すぐ出るから。」 「うん。わかった。ありがとう尚くん。」 すぐに会社を出て待ち合わせ場所に向かう。 梓ちゃんとは蓮の事があってから、たまに会ってる。蓮の代わりに梓ちゃんの幸せ見届ける使命感みたいな感じ。 「あっ、尚くん!」 手を振る梓ちゃんを見て、俺は何か安心した。いい知らせかもしれないな。 レストランでランチを食べながら話をした。 「あのね、尚くん。私…洸ちゃんとの結婚、前向きに考えてみようと思ってるの。」 洸ちゃんとは、梓ちゃんの幼なじみで蓮が亡くなってからずっと傍で支えてくれてた人だ。 「うん。梓ちゃん。俺、嬉しいよ。洸樹なら梓ちゃんを任せられる。きっと蓮もそう思ってるよ。」 「ありがとう…尚くん。この前、蓮くんのお墓参りに行って、その時、蓮くんにさよならとありがとうを言ってきたの。洸ちゃんに蓮くんにさよならとありがとうは言えたけど…蓮くんの事は忘れる事は出来ないって言ったら…忘れる必要はないって…一緒に…おぼっ…覚えていようって言ってくれて…」 ポロポロと涙が頬をつたう。 突然、蓮が死んで、訳もわからずひとり残された梓ちゃんは放心状態だった。洸樹がいなかったら立ち直れなかったに違いない。 「うん。うん。梓ちゃん。洸樹がいい奴で良かった。蓮はもういない。けど俺達のここ(心)に生きてる。梓ちゃん、幸せになっていいんだよ。洸樹と幸せになるんだよ。ほらっ泣かないで。」 「あ…ありがとう。ありがとう尚くん…。」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!