ー刃血ー

9/22
前へ
/233ページ
次へ
***** 蓼傍は、目の前で異様なオーラを放つ鴉間颯を凝視していた。刀を持ち、その刃先には血がべっとりと付いている。 刀には大勢を殺せるほど、殺傷能力が高くないのは知っているが、おそらくあの男なら、乱暴に刀をぶつけるだけで肉を抉るのは可能だろう。 だが、今は負ける気がしなかった。いつもなら、鴉間颯に適わないと察し、逃げ腰になるだろう。 しかし、今は刀に頼りきり、動きが単調になっている部分がある。肉を抉ることは出来ても、致命傷を与えるには至らない。 「ふしゅーーっ。」 深く息を吐き出し、ピタッと止める。その瞬間、場の雰囲気が一変するのを肌で感じた。 「うああああああっっ!!!」 鴉間颯の怒号を合図に、二人は互いに正面へと走り出した。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

197人が本棚に入れています
本棚に追加