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蓼傍は、目の前で異様なオーラを放つ鴉間颯を凝視していた。刀を持ち、その刃先には血がべっとりと付いている。
刀には大勢を殺せるほど、殺傷能力が高くないのは知っているが、おそらくあの男なら、乱暴に刀をぶつけるだけで肉を抉るのは可能だろう。
だが、今は負ける気がしなかった。いつもなら、鴉間颯に適わないと察し、逃げ腰になるだろう。
しかし、今は刀に頼りきり、動きが単調になっている部分がある。肉を抉ることは出来ても、致命傷を与えるには至らない。
「ふしゅーーっ。」
深く息を吐き出し、ピタッと止める。その瞬間、場の雰囲気が一変するのを肌で感じた。
「うああああああっっ!!!」
鴉間颯の怒号を合図に、二人は互いに正面へと走り出した。
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