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コツ…と、誰かの足音が聞こえる。天井に描かれた星座はなりを潜め、保健室の扉が開いた瞬間、あの曲もブチンと切られた。
「本当に……insistant.」
僕は上体をゆっくりと起こし、扉の前に立つ悪魔の姿を照らす。その悪魔の頬には珍しく傷が付いていた。
僕はこの時の為に保健室の窓を予め開けておいた。今回は前のように飛び降りて、距離を縮めるという作法は通じない。
ーーー単純な足の速さが勝敗を決する。
「今度はきちんと殺してあげるねぇ。それじゃあ、よーいドンッ!」
僕は窓から飛び出し、校庭へと走り出す。校庭のあの広さなら思う存分に走ることが可能だ。
背後に悪魔の笑い声が背筋を撫でるが、僕は決して振り返らなかった。
ーーーさっさと助けに来い、クソガキが!
心の中でそう呟き、ひたすら足を動かし続けた。
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