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この町の近くには、木材で出来た階段がある。強い雨など降ると、足場が滑りやすくて危険だが、この町には例外がいる。
仙洞千晴という少年だ。気の毒だが、彼が死なねば、全ては始まらないだろう。
大人達が、万が一にも幼いこの少年だけは殺さないという無駄な情けをかけることもあり得る。そこで僕は違うと警告しなければならない。
佐々木は、木材のバケツいっぱいまで水を入れ、階段の1段だけに集中して流した。多少は下の段にも水が流れるが、その段の水はものすごい量が溜まり、“あの遊び”をすれば滑ることは目に見えていた。
仙洞には片足だけで階段を数段上るという謎の遊びで暇な時間を潰す。片足だけであの段を含めた階段を上ろうとすれば、横に滑り、そのまま転倒するだろう。
佐々木は、体育座りで身を縮める仙洞に声をかけ、醜悪な笑みを浮かべて、遊びに誘った。
ーーーごめんね。仙洞。
空には、1羽の鴉が僕を睨みつけていた。
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