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飛田は何かを言おうとしたが、唇を強く噛んで、俯いてしまった。さすがにこの状態では表情は見えない。
「友としての、情けのつもりだったのか?」
彼は顔を上げて、鋭く睨んだ。どうやら図星のようだ。
「……飛田、僕達は友達だ。そうだろう?だから、この槍を抜いて、保健室に連れていってくれないか?」
本来なら出血を防ぐために、槍は貫いたままの方がいいが、動くたびに槍と肉が当たるのは痛いから避けたい。
「飛田、勘違いしないでくれ。僕がこの惨劇の黒幕な訳がないだろう?あれは鴉間颯の嘘だ。騙されちゃいけない。」
何度も悲願するが、彼は決して槍を抜かず、強く握り締めるだけだった。
「頼むよ飛田。僕は、君とまた小説について語り合いたい。君だって読書友達ができて嬉しいと言っていたじゃないか?」
彼はそれでも意思を曲げない。いつもは臆病なのに、こんな時だけ強くなるとは。やはり人間とは興味深い。
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