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体が凍える。視界は相変わらず不安定で何も見えない。全身の自由は奪われ、動くことすら出来なかった。
「……こわい。こわいよ。」
その悲痛な訴えですら、誰にも届かない。結局、願い事を叶えた代償に私という存在をほとんど奪われてしまった。
きっと、このまま誰にも気付かれず、惨めに死んでしまうんだと思うと心が痛む。
その刹那、耳に扉が開かれる音がする。今の今まで、誰も開いてくれる気配のなかった扉を誰かが開けたのだ。
背後から聞こえたため、振り返ろうとするが、体の自由を奪われていることに気づき、振り返ることを諦めた。
「誰……ですか?」
「僕だよ。星田さん。」
この声はーー星田香織は安心感から思わず涙が溢れた。
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