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「私を、殺して。」
西森千花(ニシモリチカ)が佐々木響我の瞳を見つめて、そう告げた。それは夜の○○高校の屋上のことである。
僕には理解できなかった。彼女は僕にとって憧れの存在であり、クラスの中ではアイドル的存在でもある。
何故、殺してくれなどと頼むのか、僕にはとても理解は出来ないが、それ以上に僕は女性を殺すなどしたくない。
「無理だ。」と僕は言った。なのに、僕の両手は彼女の首へと向かっていた。
「ありがとね。キョウちん。」
その時、僕の脳裏に一瞬“ある少年”の笑顔が過った。その少年が僕に囁く。
「彼女を早く殺してあげてよ。」
親指に力が入る。僕の耳に少年の囁きがずっと続く。耐えられない。逃げ出したい。
彼女の体温が冷たくなった瞬間、僕に女性を殺したという現実が襲いかかる。
あの少年の囁きがなければ、僕は彼女を殺さなかったかもしれない。そう思った僕はその日から耳にイヤホンを差し、ある曲を流し始めた。
その曲はまるであの時の彼女の悲痛な叫びのようだったーーー
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