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お互いの秘密に目を瞑っていたとしても、一度秘密が明らかになってしまえばもう元には戻れない。
失踪なら家出かも知れないと割り切ることができるけど、死体が上がってしまったら、殺人犯を捕まえなければならない。
同じことだ。
決定的な事実が明らかになってしまったら、その背景もいつか晒されてしまうのだ。
問題を先延ばしにしていたツケだと言われれば、その通りかもしれない。でも最初からツケなんて踏み倒すつもりだった。
何もかもをさらけ出さなければいけない関係なんてないから。
なんにしても、オレがテツと再会して築き続けた【関係】が壊れてしまうだろう。
いや、ここまで来てそれを予感と呼ぶのは馬鹿らしいし、わざとらしく聞こえるだろう。
この結末を迎えた時点で、いや、オレがこの結末に気が付いた時点でテツとオレはもう終わっていたんだ。
* * * * *
また後悔のような、絶望がオレの胸を圧迫した。
キリキリと痛む胸の内で気の利いた当たり障りのないセリフを考えたが結局なにも浮かばなかった。
「やあ、テツ。元気そうだね」
空元気でそれだけは言った。
「君も元気になってきたかい?」
聞きなれない【君】という言葉が耳についた。
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