第1章

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 押すな…?  おばあさんは確かにそう言っているようでした。ですが誰もおばあさんを押してなんかいません。やはり認知症かと思った時、私の背後から大きな声がしました。 「ダメだよ!キヨさんっ!!」  振り返ると一人の男性がこちらに駆け寄って来るところでした。紺のポロシャツにベージュのスラックスという格好をしていたため、すぐに近所の介護施設の職員さんだとわかりました。  男性に話を聞いたところ、やはりこのおばあさんは介護施設の入居者の女性でした。時々認知症による徘徊をしてしまうことがあるそうです。  男性は私に礼を言うとおばあさんを連れ施設に帰って行きました。ただ、おばあさんは依然として押すなという言葉を繰り返しているようでした。  私もこの後急いで出勤したため、一時はどうなる事かと思いましたがなんとか無事遅刻せずに会社に着くことが出しました。
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