11人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと目を覚ますと私は病院のベッドで横になっていました。
後々話を聞くと、あの直後私は車に轢かれ意識不明の重体となっていたようです。運良く一命を取り留め目が覚めたのは事故から10日後のことでした。
入院中事故の詳細を聞きに警察の方が病室を訪れましたが、私は真実を話すことはしませんでした。所々嘘を交えながら事故の詳細を説明しましたが警察の方はあまり踏み込んだ質問をしてきませんでした。ですが何かを言いたそうにしながらもその言葉を飲み込んでいるのに私は気が付きました。もしかするとあの青年のことだったのかもしれません。あの交差点で事故に遭われた別の方々からもあの青年に関する話を聞かされていたのかもしれません。
また、あのおばあさんについて警察の方に聞いたところ、無事保護され施設に戻されたとのことです。
そしてあの事故から1年が経った現在、私は無事社会復帰を遂げています。もちろんあの交差点へは近付くことはありません。どんなに遠回りをしてもあそこへ近付く気にはなれないのです。
ですが、今でもあの交差点から、ブレーキを踏む車の甲高いスキール音が聞こえてきては、私の中にあの青年の不敵な笑みと当時の恐怖が再び蘇るのです。
その後聞こえてくる救急車のサイレンを聞きながら、事故に遭われた方の無事を祈ることしかできず、もどかしい日々を送っている昨今です。
最初のコメントを投稿しよう!