第4話 猿は曲者? キシフター登場!

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第4話 猿は曲者? キシフター登場!

 「……まただ、また熊鍋食ってからの記憶が抜けてる」  街道を歩きながら太郎が呟く、青犬村での出来事からアオシフターことチグサを加えて三人となったブレイブシフターズ。  仲間が三人になった祝いだと、道中で熊狩りをしてアカネが作った熊鍋を食べてからの次の日に至るまでの記憶が太郎には抜けていた。  「それはそれは、絵にも描けない素晴らしいひと時でございました♪」    チグサが恍惚とした表情で答える。  「流石は太郎様、また熊鍋をいたしましょう♪」    アカネも頬を染めて呟く。  「いや、俺は二人に一体何をしたんだ! もしかして、鍋に何か盛ったのか?」    風変わりだけど美味しい鍋料理に太郎は恐怖を覚えた。  「滅相もございません、熊鍋は太郎様のお祖母様であらせられるヤチヨ様が生み出したオーガの伝統料理でございます♪」    アカネが笑って否定する。  「とても素晴らしいご馳走でございました♪」    チグサも笑うだけだった。  「確かに美味かったけど、記憶が抜けるのはちょっと? しかし二人とも、一気に仲良くなった気がするな?」  太郎が武士っぽい男装のアカネと、忍者丸出しのチグサを見て呟く。    「はい、太郎様と共に生きる同志にして新たな家族ですからな♪」    アカネが豪快に笑う。  「我ら三人、生まれは違えども常に一つでございます」    チグサは真面目な目つきで答える。  「……うん、まあ仲が悪いよりは良いよな? 二人とも宜しく頼むぜ」  太郎が二人に語ると二人も頷いたので、三人は再び街道を歩き出す。    彼らが進んで行くと、遠くに見える山に暗雲が広がり雷が落ちだした。    「……あの山の当たり、雷が落ちてるって雨が降るのか?」   珍しい天気だなと太郎が見やる。  「……あれはもしや、昔話に聞く黄猿山(きざるやま)では?」    「確かに、あの雷のみが降る山は黄猿山に相違ないな」    チグサとアカネが山を見てから太郎を見る。  「……えっと、俺に関係ある話みたいだな?」  太郎は二人の様子から、自分にも縁がある話だと感じた。    「つまり、あの山には猿のモンスターがいるんだな?」  立ち寄った茶店で、お茶と団子を飲み食いしながら二人から話を聞く。  「はい、その昔ヤチヨ様と太助様がこの地で悪さをしていた黄色い毛の猿の物の怪を退治してあの山に封じたと村の記憶にございました」    アカネが答える。  「私は、神様に閉じ込められた猿が暴れてるからあの山で雷が落ちるんだと?」    チグサも似たような事を言う。  「そうか、じっちゃんが殺さなかったと言う事はそいつを仲間にできるかもな♪」    二人の話を聞いた太郎がその猿を仲間にしようと決める。  「……なるほど、確かに我らが攻め手に回れば太郎様の守りが薄まりますしな」    アカネは思案して納得する。  「確かに、護衛役はもう一人いた方が安心ですね」    チグサも納得する。  「いや、まあ俺の身もだけど二人の身も守る為にもだからな? お互いがお互いを守りバランスを取らないと助け合いだから」  太郎が言うとアカネ達は頬を染める、二人の中で太郎の好感度が上がった。  茶店を出て黄猿山に着いた三人。    「ここか、緑が少ないな?」    太郎が現場を見て呟く。  「雷の所為で作物が育ちにくいのでしょう、果たして猿は何処にいるやら?」    アカネが落石などを警戒しながら前衛で進む。  「……もしかすると、こちらの方かもしれません?」  途中の道が左右二手に分かれしており、チグサが左の山道を選ぶ。    「そうか、ならそっちから行こう」  太郎が決断し、三人は猿を求めて進んで行く。  「……どうやら、あの岩屋が封印の場所のようですな?」  アカネが顔で指し示すと、彼らの先の岩に洞窟が出来ていた。  「確かに、洞窟の入り口に雷猿封印(かみなりざるふういん)と刻まれてます!」    チグサが注意書きのような刻印を見つけた。    「よし、それじゃあ入って見るか♪」    太郎が警戒せずに先に進んで行く。    「た、太郎様! お待ち下さい!」    「危険ですよ、ご主人様!」  アカネとチグサが太郎の後を慌てて追いかける。    「太郎様、確保!」  アカネが太郎に追いつき、彼を羽交い絞めにした。    「うお! ちょ、大丈夫だって!」  洞窟に入った途端で捕まった太郎がもがく。    「ご主人様、浮かれ過ぎです!」    チグサも怒る。  「もはや太郎様は、御身一人の体ではございませぬ!」    アカネが心配して叫ぶ。    「いや、すまない」  太郎は謝り改めて三人で洞窟内を進む、灯に関しては何故か太郎が入った事で洞窟内が明るくなった。  「……なんでだろう?」    疑問に思う太郎。  「もしや、ヤチヨ様の縁者である太郎様を岩屋が主と認めたとか?」    アカネが可能性を挙げて見る。  「祖母ちゃんがやったなら、ありえそうだな」  取り敢えずその仮説に太郎は納得した。  「……むむ、この先に雌猿の臭いがします!」    臭いを嗅いだチグサが叫んだ。  「いや、性別までわかるってすごいな!」    太郎には理解できない感覚だった。  「ここがゴールですな、岩で檻が出来てますな」  アカネが呟いた通り、辿り着いた先は鍾乳石が柵となって岩の檻ができていた。    「……マジか、今助けるぞ!」  檻の中に赤ん坊くらいの大きさの赤い肌に黄色の毛の子猿が倒れていた。  太郎はアカネ達が止める間もなく、シフトチェンジャーを振るって鍾乳石を壊して中に入ると水筒を出して中身を口に含んでから子猿に駆け寄り抱き上げて口移しで子猿に水筒の中身を飲ませた。  「ウッキッキ~♪ ありがとうよ、優しい少年♪」  目を覚ました子猿がしゃべり、ピカッと黄色い光を放って身長が二mほどの細マッチョだが胸の大きい綺麗なお姉さん猿と言う姿に変化した。    「なっ! まさか騙したのか?」    太郎は猿に騙されたと気付く。  「弱ってたのは本当さ、元気になったのも本当♪ 良い婿ゲットしたぜ~~♪」    猿は立ち上がり、頭から稲妻を放って洞窟に穴を開け太郎を抱えて飛び出した。    「た、太郎様~~っ!」    「ご主人様を返せっ!」  我に返った、アカネとチグサが猿と太郎を追いかけた。    「空が青い♪ 良い男ゲット♪ 私はヤチヨに勝った♪」  洞窟の上で猿が高笑いをする、だが太郎はやられっぱなしではなかった。    「ブレイブシフト! シロシフター!」  シロシフターに変身した太郎に猿が微笑んだ。  「お♪ 優しいだけじゃなくて、強いってか♪ ますます惚れたぜ少年♪」    虚空から金で出来た先が開いた人の掌のような五本の熊手を構える猿。    「そうか、ならお前を倒して俺がお前をもらう!」    「その求婚、受けて立つ!」  シロシフターはモンスターを倒して仲間にするつもり、猿の方はシロシフターを倒して婿にするつもりと会話はしても通じ合ってはいなかった。  「ウコン様のプラズマ身外身の術(しんがいしんのじゅつ)!」  自分と似た姿のプラズマの分身を生み出して襲い来る猿ことウコン。    「全て散らせば良い、グンバイトルネード!」  飛び掛かって来るウコンと分身達を、シフトチェンジャーを振り回して竜巻を起こして吹き飛ばすシロシフター。  だが、分身は消えてもウコンは雲に乗って耐えた。    「まだまだ♪ こっちは飛べるのさ♪」  調子に乗り熊手から雷を放出して攻撃するウコン。    「何の、グンバイピッチャー返しだ!」  シロシフターがバントに構えたシフトチェンジャーが輝き、ウコンの雷を彼女へと跳ね返す。  「ウキャキャ~~ッ! この雷、まさかヤチヨの力か~~っ!」  自分で出した雷を、別の力に変換されて跳ね返されたのでダメージを受けて雲から落下するウコン。  「猿も雲から落ちる、お前は運が良い♪ お前も今日から変身勇者、俺達ブレイブシフターズの仲間だ♪」  自分も空を飛び、ウコンを受け止めて地上に降りたシロシフター。    「俺の勝ちだ、桃饅頭を食うんだよ♪」  「え? 私、負けたの? ……もが、美味~~っ♪」    変身を解き、茫然と立ちすくむウコンに桃饅頭を食わせた太郎。  「封印されて、鬱憤も溜まってただろうし腹も空いてただろう♪」    ウコンに尋ねる太郎。  「美味しく優しい味でございました! 情報も頭に刻まれました、末永く永遠にお供いたします~~!」  それに対し桃饅頭を食わされたウコンはと言うと、太郎に対して歓喜の涙を流して土下座をした。  「ああ、じゃあ黄色だからキシフターだな♪ 宜しく、ウコン♪」    ウコンに手を差し伸べる太郎とその手をガシッと握るウコン。  「お任せ下さい太郎の大将♪ このウコン、変身勇者としても妻としても尽くす所存でございます~♪ お祖父様に似て、素敵でございます~♪」    太郎の手に頬を擦り付けるウコン。  「え? ちょっと待って、祖母ちゃんに封印されてたのってまさか恋愛絡み?」    ウコンから祖父の名を聞き、嫌な予感がする太郎。  「はい♪ 昔は太助様に憧れてたんですが、今からは太郎の大将を推します♪」    ウコンの言葉に太郎は祖父のモテっぷりに溜息を吐いた。    「太郎様、お見事でしたっ♪」  「ご主人様、ご無事で何よりですっ♪」  アカネとチグサも太郎の所へと辿り着く。  「先輩方、これから宜しくお願いします♪ ブレイブシフト♪」  正座してアカネ達に笑顔で挨拶をしてから、シフトチェンジャーとなった熊手で変身するウコン。  その姿は、ボディは白地のスーツの上にカンフー着のようなジャケットに似た黄色の胴鎧が付いたヒーロースーツ。  頭部全体を覆うマスクは、口を開けた猿の頭を模した物を被っていた。  腰回りも黄色いアーマーが付いており、尻には尻尾のガジェットが付いている。    そんな姿で、熊手を持って立つのが新たな変身勇者キシフターであった。    「キシフター見参、ウキキッ♪」  あざとくポーズを取るキシフターをジト目で見るアカネとチグサ。    「私より年上のはずですが、あざといですなチグサ殿?」    チグサに問いかけるアカネ。  「あざといです、猿知恵がちょっと小賢しいかなと思いますアカネさん」    チグサもウコンに呆れていた。  「う~ん、アカネ達の反応がヤバいな? 俺が自分から仲間に入れた以上、どうにかせねば」  仲間達の様子を見た太郎は、今後増えた仲間をどうまとめてチームとして戦って行こうかと頭を捻るのであった。  猿のウコンがキシフターとして仲間となり、四人となったブレイブシフターズ。    だが彼らの旅は、まだまだ序盤なのであった。   
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