眼鏡の奥の眼差し

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立ち込める湯気。 レンゲでスープを掬い、先ずは一口。 口の中に広がる、味を楽しむ。 「ウマーイ」 思わず零れる言葉に、女らしさは無い。 カウンター席で隣り合わせ。 倉本と二人、ズルズルと豪快に、麺を口に運ぶ。 「あっ」 ふいに隣から声が聞こえて、ラーメンをすすりながら、視線だけずらす。 「どした?」 「眼鏡が…湯気で曇った。」 そう言うと、割り箸とレンゲを一端置いて、眼鏡を顔から外す。 …眼鏡はずしてる所、初めてみたかも。 ふーん。倉本ってこんな顔してたんだ。 レンズを拭く姿を、思わず見つめてしまった。 もちろん、ラーメンを食べる手は止めないけれど。
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