眼鏡の奥の眼差し

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「何?」 「あー…、そんな顔してたんだって思った。」 「今更かよ」 「今更だよ」 倉本は結局、眼鏡を外したまま、またラーメンをすすり出した。 「お前、俺の事なんか見て無いもんな」 「えー、何それ。見てるよ。眼鏡無い顔が新鮮だっただけ」 「へぇ」 「何よ、その気の無い返事」 「いや、別に。……恥ずいから、あんま見んな」」 「あ、そう言われると見たくなる」 「いや、見なくていいから」 見たくなる、とか言いつつも、ラーメンを食べる手を止めたくないから、特別何か行動する訳でも無い。 何となく、その後は特に何も言わなかった。 ラーメンを食べ終わるまで、お互い無言。 だけど、その無言は居心地が悪い訳でも無く、自然だった。
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