第1章

4/18
前へ
/36ページ
次へ
乱れた息を整えるように、ベッドの上で浅い呼吸を繰り返す。 この部屋に入った時から、お互いに言葉は無い。 それは、行為の最中も、行為を終えた今も同じだった。 何か言おうとしても、全て黒沢さんの唇に遮られてしまって、言葉にならなかった。 何度も何度も口を塞がれた。 名前を呼び合う事もしないのに、塞がれる口はどこまでも甘く。 そこに 「愛」 なんて錯覚を 感じてしまったくらいだ。 乱れた呼吸が整った頃。 ベッドの下に投げ捨てられたようなバッグを拾い、その中から煙草を取り出す。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加