たった一度の甘い囁き

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「…会いたい」 こんな事、言うの私らしくないのに。 素直に会いたいなんて、言うような女じゃ無かったのに。 どうしてだか、言葉が零れ落ちてしまう。 「今すぐ行くから住所教えろ」 そんな言葉をくれるから、小さな声で住所を呟いた。 電話を切ると、少しお酒が回った身体を奮い立たせて、帰路を急ぐ。 早く、早く。 一秒でも早く、会いたい。 自室について、黒沢さんが来るのを心待ち。 一人でそわそわしていると、静かな部屋にインターホンの音が響く。 小走りで玄関まで行き、ガチャっとドアノブを回した。
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