13人が本棚に入れています
本棚に追加
黒沢さんの顔を見るよりも早く。
腕を引っ張られて、広い胸板へと飛び込んだかと思えば、次の瞬間には唇を奪われていた。
目を閉じる暇も無いキスだったから、黒沢さんが後ろ手でドアを閉めるのが目に入った。
それを見届けた後、ゆっくりと目を閉じる。
鼻孔をくすぐる、いつもの爽やかな香水。
初めて会った時は、この香りで修一と似ていると思った。
だけど、もしも今、街中でこの香りを感じた時。
思い出すのは、間違いなく黒沢さんだ。
触れるだけの長いキス。
ゆっくりと離れて、数センチ前に広がるのは端正な黒沢さんの顔。
艶やかな黒髪から覗く、漆黒の瞳に吸い込まれてしまいそうで、魅入ってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!