たった一度の甘い囁き

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無言で手首を掴まれて、短い廊下を歩く。 私の部屋はワンルームなので、短い廊下の先に部屋がひとつ。 部屋に入ってしまえば、ベッドまでの距離は極わずか。 それでも、その短い距離がじれったくて仕方ない。 狭いシングルベッドの上に押し倒される。 黒沢さんもベッドの上に乗れば、その重みでギシっとスプリングが軋む。 掴んでいた私の手首を、自分の口元へ運び、いつかの夜と同じように指先を丁寧に舐める。 一本一本丁寧に扱うから、ゾクゾクして、身体がびくっと反応してしまう。 そんな私を見て、少しだけ柔らかく微笑むと、今度は太腿から脹脛を伝うようにゆっくりと舐め、脚の指先を舐める。
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