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倉本と別れて一人。
月夜が照らす淡い光の中、帰路を歩く。
バッグの中から、手探りで携帯を取り出した。
まだ登録しただけで、かけた事の無いメモリを呼び出す。
お酒の力もあってか、初めて電話をかける。
右耳に押し当てた携帯からは、規則的なコール音。
…出ない、かな?
切ろうと思った時に、声が聞こえてきた。
「もしもし?」
抑揚の無い、低い声。
聞いただけで、胸が軋む。
「佐伯です。」
「ああ、」
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