第1章

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始業時間になり私はグループの前に出た。 ふた月に1回くらい回ってくる朝礼当番がなんと憂鬱なことか。 50人近くいるメンバーを前に、 視線をどこに向けていいのかいつも迷う。 でも、 せめて大きな声と笑顔だけはかかさずにいよう、 と思っているせいか、 私は意外と人前に強いと思われているらしい。 「何か周知事項はありますか。」 「では私から、――」 いつもの流れで部長の長い朝礼のひとことが始まった。 そのとき、 なんとなく視線を感じて目を向けると、鈴木君と目が合った。 確かに目は合った。 でもすぐ逸らされる。 たったこれだけのことなのに違和感を感じるのは この1回に限ったことではないからだ。
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