離別と旅立ち

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「ヒドラ細胞の特質だよ。感情が高ぶったりすると、一気に体の特性が変化し、並外れた力を発揮できるようになるんだ。俺たちはそれを、"覚醒"とよんでいる。お前の場合は、覚醒すると、特に運動能力がアップするようだな。だが、訓練しだいでは、他の能力も発揮できるかもしれない。覚醒状態になる訓練をしないか?」 「何を言ってんだ。人体実験の被験者になるなんて、ごめんだ」 「そうじゃない。"ねむのき計画"の戦士の一員にならないか、と言っている」 「あの話、夢じゃなかったのか…?」 蓮はそう言って愕然とする。 「上にたつものとしてうやまわれることに抵抗があるようだから、まずは、下っ端から経験すればいい。入ってもみないで、"ねむのき計画"の崇高さは理解できない。お前が大切にしているガレのためにも、計画にくわわった方がいい。彼女にチップをうめこんだのは、白菊さんだ。理由ははっきりとは分からないが、今、計画のトップは、彼女だ。お前が、計画のトップにたつようなことになったら、ガレを鳥かごからだしてやることも叶うかもしれないぞ」 「……」 蓮は、沈黙した。 「お前は、今回の事件で、悟ったはずだ。人殺しには、死という罰が相応しい、と。そして、大切な者を救うためには、鬼にならなければならない、と。そろそろお前も、自分の生きるべき道を悟っていいころだ」 「ガレさんに別れの挨拶をしにいく」 蓮が言うと、三島は、そうか、と言ってやさしく笑む。
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