口紅と孝行

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「二人、やられてる。川井麗奈(かわいれな)という女性と、鉾田努(ほこたつとむ)という男性で、川井は鼻をそがれ、鉾田は両耳を切り落とされた形でみつかった。そして、二人に共通する特徴は、口に口紅が塗られていたこと、だ。川井麗奈だけならわかるが、男の鉾田が自分で紅をさすとは考えにくい。二人の殺害前には、警視庁に犯人からの声明が届いており、"鼻っ柱の強い人間とひとの話を聞かない人間を粛清する"、とのことだった。次は、"腹黒い人間と見て見ぬふりをする人間を粛清する"、との声明が届いていて、警察が捜査した結果、国会議員の田口清隆(たぐちきよたか)が行方不明になっていることが判明した。"腹黒い人間"が彼である可能性が高い。もう一人、"見て見ぬふりをする人間"はおそらく、彼の秘書の糸田伊代だとして、警察は、彼女を保護した。ガレ、君には、犯人を暴き出すため、糸田伊代に化けてもらう。理解したか?」 「ええ。事件に関する資料は?」 ガレが言うと、三島は、にいと笑んで、鞄から分厚い資料を取り出してガレの前に置いた。 「じゃ、頼むよ」 そう言って三島は部屋をでていった。
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