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「……そうしクン、聞こえるカナ?」
「!」
ポスターの向こうから名を呼ばれ、思わず返事をしそうになった。が、我慢だ。おれの声でパプリンタンの声を消したくはない。
「いつも、私のコトを見ててくれてアリガト。そうしクン、大好きダヨッ」
「!!!」
おれは感動と興奮に打ち奮え、溜まらずポスターのパプリンタンに口づけをした。
それからパプリンタンは、おれへの想いを実に原稿用紙30枚分喋ってくれた。
時にはアドリブを交え、時には聞いた事の無い甘い声で囁いてくれた。
おれは天にも登る心地で壁の向こうに耳を傾き続けた。
「ふぁ〜あ。そろそろ眠くなっちゃっタ。オヤスミ、そうしクン。パプリンはいつでもそうしクンと一緒ダヨッ」
最後の台詞を読み終え、何も聞こえなくなったのを見計らい、おれはレコーダーのスイッチを切った。
ありがとう……ありがとうパプリン……。おれもう、死んでもいい……。
……いや、まだ死にたくない。毎日この声を聴いて生きていたい。
それからというもの、おれは毎日レコーダーを通してパプリンタンとの会話を楽しんだ。
誰も知らない、おれに向けられたおれだけの声。その魅惑のボイスを聴く度に、パプリンタンへの想いが募っていく。
ああ……もっと、パプリンタンの生ボイスが聞きたい……。
あの冴えない旦那は、毎日おれの知らないパプリンタンと直接喋ってるのか……。くそう、許せん。
そうだ、おれの方がパプリンタンが好きなんだ。あんな男のモノにしてたまるか。
パプリンタンは、おれのモノだ……!
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