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最後の部屋。また狭く、細い階段を登った。
「今、どれくらい登ったんだ?ふぃー!」
『今の高さで、50メートルほどだ。ピラミッドのほぼ中央だ』
そこは、小さな部屋だった。そして…。そいつはいた! 紅葉だけが驚いている。
「スフィンクス!」
『そう、我の分身。ヒト形にもなる、スフィンクスだ』
「どうも、スフィンクスです」
ギリシャ彫刻風の美青年に変わった。紅葉は惚れた。
「連れて帰って、いいか?」
みんなは、無視した。
部屋の中央に棺がひとつだけある。
「クレオパトラの棺だよな」
紅葉は眼を見開き、言った。
『そうだ、その棺の守護を、そのスフィンクスに託しているのだ』
「名前とか、付けなかったのか?」
『ミケ、だ』
みんなで、大笑いした。
「なるほどな! 必然でも、偶然でもないと思うよな! よーくわかったよ!」
『ミケランジェロのことを想い、名前を拝借した。我への戒めのようなものだ』
「いや、ミケランジェロは喜んでいると思うぜ。あんな完璧な形で、残っているものなんてないからな!」
『そうだろうか?』
「そうに決まってるさ!」
紅葉は少し間を置いてから言った。
「下の、クレオパトラ像、一般に公開できねーかな? って、想ったんだよ。そうしたら、ミケランジェロも、もっと喜ぶんじゃないか、ってな」
『機会があれば、そうしよう。我も気にかけてはいるのだ』
「それがいいよな。もうここで終わりだよな?」
『棺の中は見ないのか?』
「ああ! 代わりにクレオがいるだろ? それでいいさ」
『わかった。では、戻って参れよ』
このあと、紅葉は宝物庫で、レプリカの金貨を山ほど持って帰ろうと大暴れをしたが、『ミケ』に取り押さえられた。紅葉はあとでクレオから、20枚だけもらった。
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