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紅葉はふたりに指示して、少しずつ、大きいスコップで掘っていくように言った。
「クレハさん、なんか出た!」
「お!早速か!」
それは、ツボのようだった。陶器ではないようだ。刷毛で、丁寧に周りをキレイにして、写真を撮った。
「石かな? でも、ツボだよな、これ」
紅葉は、小さいスコップをみっつ取った。
「じゃ、これで、少しずつ掘っていくぞ」
三人は、慎重に掘り進んだ。そして、全貌を見て驚いた。文字のようなものが刻まれた、壺だった。象形文字のようにも見えるが、紅葉には覚えのないものだった。
「新事実、30分で発見だ!」
考えられる角度から、写真を撮った。そして、あるべき向きにツボを置いた。中には、土と砂が入っている。
「じゃ、ゆっくりと出すから、変なものがあったら言ってくれ」
紅葉は、ドキドキしていた。
「あ、チョト待てよ。スフィンクス! このツボ、見覚えないか?」
『いや、見たことはないな』
「この文字みたいなの、わかるか?」
『見えてはいるが、見覚えはないな』
二千年の歴史を持つ百科事典が知らないことだ。新事実に違いないだろう。
「クレハさん、これ」
マルクスが小さな石を、紅葉に手渡した。紅葉は、刷毛で、キレイにした。
「ここにも、文字が掘ってあるな、通貨か? この石、宝石みたいだが」
スフィンクスも知らないようだ。
「ふたりで、ゆっくりと出してみてくれ。水を汲んでくる」
紅葉は、三人の家に向かった。
最低限、水は必要なので、スフィンクスに頼んで、海水の蒸留器を作ってもらった。副産物として、塩もできる。不純物は肥料にもなる。家の近くに、試験的に農地を作ることにしていた。コックをひねれば、貯蓄された水が出てくる。これは蒸留水。まじりっけなしの水だ。ある程度の水を使ったら、自動的に蒸留するようになっている。その水を、バケツに汲んで、戻った。
戻ったら、紅葉は仰天した。宝石の山になっていたのだ。
「これって、やっぱり、通貨か。贅沢な通貨もあったもんだな」
ひとつを綺麗に洗って、タオルで拭いた。ルビーのように赤い、透明がかったものだった。
「スピネルか?」
レッドスピネル、赤い宝石で、ルビーと全く見分けがつかない。宝石としても用いられるが、ルビーよりも安価なので、パワーストーンとしても用いられる。
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