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「貯めこむことはできるのかしら? 使ってばかりじゃ、すぐになくなっちゃうでしょ?」
『は! 仰せの通りに!』
「姫様、マルクス・アントニウスでごさいます」
マルクスは、姫の前にひざをついて、頭を垂れて言った。
「あ、かしこまらなくていいわよ。そういうの好きじゃないから」
少女は、両手のひらをマルクスに向け、手のひらを左右に振りながら言った。
「は!仰せの通りに」
「じゃ、マルクス。スフィンクスの言ったこと、よろしくお願いするわね。でもその服装じゃ目立つでしょ? ねぇ、スフィンクスゥー! この国にあった服装をマルクスに! あ! 派手なものはダメよ。今風の若者が着るもので」
『はい、かしこまりました』
「うんうんうん! いいと思う! マルクス! 素敵だわ!」
「はい、ありがたき幸せ!」
「ねぇ、そういうのってやめない? スフィンクスも。もっとラフな感じでいいよ。堅っ苦しじゃない」
少女は、目尻を下げ、困ったような顔をした。
『わかりました。この程度でいいでしょうか?』
「うん、いいよ。あ、それと、クレオパトラ様とか姫様もなしね。そうね…。クレオでいいわ!」
『わかりました。そうします』
「わかりました。そうします」
クレオの従者ふたりは、声を揃えて言った。
「あ! マルクスは、もっとラフに!『わかったよ、クレオ!』ッて感じで」
「わかったよ。クレオ、これでよろしいですか?」
「これでよろしいですか、は、いらないよ。じゃ、どうしよう…。んー、キャットフードと人間が食べるものと飲み物、お願い! あ! スフィンクスは、なにかいらないの?」
『今のところはなにもいりません、お心づかい、ありがとうございます』
「まだ少し固いわね。ま、いっか!」
クレオは、あきらめ顔から、満面の笑みに変わった。
「マルクスも一緒に食べるから、
あなたの分も買ってくるのよ、遠慮しないでね」
「わかったよ、クレオ。それでは、行ってまいります」
「いってらっしゃい! 気をつけて! やっぱりまだ堅いわね…」
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