第一章   白い惑星

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第一章   白い惑星

「これからが本当のはじまりだ」との呟きはソラとウミだけではなくこの宇宙船に乗る全ての人々が思う不安と希望をないまぜにした心情であった。赤く膨れ上がった太陽に焼き尽くされた地球を後にして、地球暦2036年2月14日、ソラ達は白い惑星を見下ろす遠地点500キロ、近地点400キロの極を周回する軌道に船体を乗り入れた。旧太陽と同じG型に属する恒星を巡り巡って10年と3ヶ月、80番目に訪れたのがこの恒星系である。確かにどの恒星も多くの惑星を伴ってはいた。しかし、恒星を周回する惑星は重力、温度、大気、水と地球の生命体を育む環境を持つことはなかった。この恒星系もまた何時もの手順に沿って惑星系を含めた大まかな探索が行われた。  この恒星(今後は太陽と呼ぶ)は旧太陽と同じ、主系列G型に属し、自転周期は29日、表面温度は5700℃、赤道半径65万キロメートル、放射エネルギーは一秒当たり340000000000000000000000000ジュールと旧太陽と較べると3%程小さい。10個の惑星を従え、4番目の惑星は太陽との距離から、この惑星が受ける熱量は1平方メートル当たり1300ワットと地球のそれに近いことが確認された。漆黒の闇に浮かぶこの惑星は近づくにつれて青い輝きを増し、地表を覆う雲の白い流れは、この惑星に水が存在する事を予測させた。  心臓が波打つほどの緊張を持って大気中の成分が測定された。波打つ心臓は湧き上がる歓喜の興奮に置き換えられた。大気分析を行った本人によれば、この時ほど自分の分析技術に疑いを持ったことはなく、幾度も幾度も繰り返しの分析を行って、その事実を確認したと語った。観測されたスペクトルの分析から、大気組成は窒素79%、酸素20.1%、炭酸ガス0.02%、アルゴンを主体とする不活性ガスは1%未満、大気圧の平均は1000ヘクトパスカル程度と測定された。古い地球に比べると酸素濃度は僅かに低いながらも、密閉の保護服を着用することもなく、陽光を浴びての地上散策が可能であろう。    
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