第二章:海の産む石、海に漂う石

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「私、買い物があるんで」 次の瞬間、ミントの香りがさっと広がって、右の手首を捕まれた。 「口止めされてるんだね」 低く刺すような声だ。 浅黒い顔は仮面さながら無表情だが、こちらの手首を握り締める手は強い。 今しがたすれ違ったばかりの母子が歩きながら、訝しげ、というより、むしろ不安げな顔つきでこちらを眺めている。 と、今度は左の二の腕を捉えられて、男と向き合わされた。 相手は勝ち誇った風な笑いを浮かべて告げる。 「君が嘘を吐く時の癖は知ってる」 言い終えると、彼の笑いはどこか哀しくなった。 私のプログラムってどうなってるんだろう。
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