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「アンブラ、お帰り」
木漏れ日の差し込む窓際で、ソファに腰掛けていたパパはパソコンの画面から灰色の目を上げる。
と、顔中に刻まれた皺をいっそう深くして続けた。
「スーパー、混んでたのかい?」
壁の時計は確かにいつも帰ってくる時刻を二十分ばかり過ぎている。
「ううん」
買い物籠から野菜を取り出し、キッチンの流しに置きながら、私は首を横に振った。
「事故があったから、麓までは遠回りしてきたの」
極力どうということもない口調で説明しながら、流しに置いた野菜の中からトマトを一つ手に取る。
急いで持って来たので、籠の中で少しだけ凹んでしまったみたいだ。
バーミリオンの皮が一部だけ痣のように色濃くなっている。
血のような、本物の赤だ。
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