第二章:海の産む石、海に漂う石

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「失礼します」 返事を待たずに踵を返す。 目と鼻の先にあるスーパーのひなびた屋号が妙に空々しく映った。 私も彼もこんな所で何をしているんだろう。 ちっとも愁嘆場に相応しい場所じゃないのに。 田舎暮らしする人たちがどうってことないものを買って帰るだけの所なのに。 まだディーノがこちらを見詰めている気配がしたが、振り向いたら負けだ。 自動ドアが背後で閉じ、野菜や果物の匂いに包まれる。 とにかく、買い物のことだけを考えよう。
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