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自動ドアが開いて、外に一歩踏み出すと、さっと冷たく乾いた空気が押し寄せた。
日差しは白々としているのに、季節は確実に冷めてきている。
目の前の駐車場には、普段も目にする小ぢんまりした自家用車がばらけて停まっているだけだ。
あの巨大な真珠色の車も、その持ち主も、嘘のように姿を消していた。
アルフレード・スフォルツァは行方不明の婚約者マルゲリータ・ヴィットーリを探してまた別な街へ去ったのだろうか。
彼が見当たらない以上、そう結論付けるよりほかはなかった。
どのみち、ここにギタはいないのだから。
「もう、逢わない」
歩きながら一人ごちると、つがいの蜻蛉がシャッと鼻先を横切っていった。
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