第三章:コマドリはどこに潜む

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――その芳しさが 恋する心に沁みる 多分、二度と逢うことはないだろうし、恐らくそれがどちらにとってもいいのだろう。 パパには、ディーノともう一度出くわした話はしていない。 むろん、彼がギタを婚約者と語っていたことも。 パパと私の間では、ディーノはお父さんを亡くしてミラノに去った、気の毒な坊やのままなのだ。 ――“私は行くわ、さようなら” 君は言ったね 別れの言葉すら告げずに姿を消した白シャツの彼も、そのまま真珠色に輝く車に乗ってミラノに向かったのだろうか。 光り輝く藍色の海に、節くれだった長い指でハンドルを静かに握り、ハイウェイを遠ざかっていく真っ直ぐな黒髪の後姿が重なって見えるような気がした。 振り向かない白いシャツの肩にはきっと水色の影が落ちているのだ。
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