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そして珍しさ故に、彼女は絡まれる事も少なくはない。今日も部屋へ辿り着く前に、気の荒そうな男から道を阻まれてしまった。
「姉ちゃん、珍しい毛色の亜人だな。バーツ様が見たら、喜びそうだ。どうだ、ちょっと付き合ってくれないか?」
前に立ちはだかる男の他に、後ろにも二人。酒場へ飲みに行く誘いならば、殺気立った気配はしない。悪意のある誘いである事は、確かだった。
「断る。亜人をさらい見せ物にしたいなら、他を当たる事だな」
「な、んだと!?」
凛として芯のある彼女の声は、男達に苛立ちを覚えさせる。懐から取り出したのは、果物を剥くには大きすぎるナイフ。だが彼女は、怯むどころか鼻で笑った。
「お前達ごときに、武器を抜く必要もないな。面倒だ、まとめてかかってこい」
挑発的な言葉に、男達はナイフを振りかざし彼女へ三方向から襲いかかる。しかしその太刀筋は単純で、ただ真っ直ぐ襲いかかるだけである。
彼女は尻尾で後ろの男達の足を転ばせ、固い鱗の左腕で正面の刃を受け止める。そして男が引く前に手首を取ると、片手で壁へと叩きつけた。
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