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勇者と魔王が凄絶な戦いを繰り広げた村民運動会から、一週間ほどが過ぎた。
両者とも方向を間違えた熱意そのままに、隣人として互いを牽制し合っている。
というつもりで、当人たちはいるのだったが。
「カインさん、最近は子供に絡まなくなったんですって」
村人たちの井戸端会議で、ひっそりと勇者の名が挙げられていた。
「よかったわあ。もしかして頭のアレな人かしらと思ってたから……」
「どうも隣に越してきた、マオウさんとかいう人と仲良くしてるらしいべ」
合わせて魔王のことも、ひそやかに。
「ああ、あの人。悪い人じゃないけど、ちょっと変わってるというか」
「よくあのバカの相手ができるもんだべ」
「似た者同士なのかしら?」
魔王をどう評してよいか悩んだ村人のひとりが、もっとも分かりやすい結論を導いた。
「結局、二人ともバカなんだべ。バカの相手はバカにしか務まんねべ」
村でそんな風に囁かれているなど露知らず、勇者と魔王は戦い続けるのだった。
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