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「しかし随分と、ナメられたもんだな俺達も!」
いくら強力なエコテロリストと言えど。ヒーローと戦うために揃ったハラペーニョの戦闘員達を前にして、正面から単独で挑んでくるのは些か無謀であった。
「返り討ちにしてやんよ!マン・オブ・スティール!」
「ミリオンバレット!」
義正と肉体強化とアテナの弾丸精製能力。二人の攻撃によってブラッディ・マスケットを打ちのめす。
――そのはずだった。
しかし、二人の身体から能力使用のオーラは発生せず、肉体が強くなることもリボルバーに弾丸が装填されることもなかった。
(能力が……)
(発動しない!?)
その動揺の隙を突き、真紅のマスケット銃が振り上げられる。ヒーローの意識すら一撃で奪う殴打。ただでは済まないだろう。
「オッラアアア!!!」
そこへ、義正とアテナを突き飛ばし、日本刀がその一撃を受け止める。
「鉄心……!」
鉄心は瞬時に状況を理解していた。先程打ち込まれた針のようなもの。アレは恐らく、能力者のチカラを封じるものだろうということを。薬品なのか『そういう能力』なのかまでは分からないが、ともかく厄介な状況になったのだけは分かっていた。
「トメぇ!義正サン達連れて逃げろ!!」
「承知シマシタ」
「なっ……!?」
「何言ってんのよ鉄心!?」
正真正銘の真剣で受け止めたはずなのに、マスケット銃には斬り込みが入るどころか刀身の方が折れそうだ。
いつも気だるげな現代っ子らしい鉄心の顔には、今でかつてないほど鬼気迫る表情が浮かんでいた。
「能力が使えないアンタらなんて、ただの特撮オタクと甘党でしかないでしょーが!ノーマルでなら、俺がまだ一番マシに戦える!」
「だけど、鉄心……!」
「義正さんッ!!!」
鉄心の悲痛な叫びに、彼の感情の全てが込められていた。
剣の達人である鉄心が、つばぜり合いのまま反撃もできずにいる。それが何を意味するか、分からない義正ではなかった。
「……撤退だ。行くぞ」
「ちょっ……本気で言ってんの義正!?」
「テッちゃん置いていっちゃうの……?」
「ゴチャゴチャうるせぇ!これは命令だ!!」
アテナも希音博士も、義正の怒号に気圧される。
そしてハラペーニョの面々はトメにより、戦場と化した焼け跡から離脱していった。
鉄心一人を、ただ残して。
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