4話:襲来!ブラッディ・マスケット!

9/14
110人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
「しかし随分と、ナメられたもんだな俺達も!」  いくら強力なエコテロリストと言えど。ヒーローと戦うために揃ったハラペーニョの戦闘員達を前にして、正面から単独で挑んでくるのは些か無謀であった。 「返り討ちにしてやんよ!マン・オブ・スティール!」 「ミリオンバレット!」  義正と肉体強化とアテナの弾丸精製能力。二人の攻撃によってブラッディ・マスケットを打ちのめす。  ――そのはずだった。  しかし、二人の身体から能力使用のオーラは発生せず、肉体が強くなることもリボルバーに弾丸が装填されることもなかった。 (能力が……) (発動しない!?)  その動揺の隙を突き、真紅のマスケット銃が振り上げられる。ヒーローの意識すら一撃で奪う殴打。ただでは済まないだろう。 「オッラアアア!!!」  そこへ、義正とアテナを突き飛ばし、日本刀がその一撃を受け止める。 「鉄心……!」  鉄心は瞬時に状況を理解していた。先程打ち込まれた針のようなもの。アレは恐らく、能力者のチカラを封じるものだろうということを。薬品なのか『そういう能力』なのかまでは分からないが、ともかく厄介な状況になったのだけは分かっていた。 「トメぇ!義正サン達連れて逃げろ!!」 「承知シマシタ」 「なっ……!?」 「何言ってんのよ鉄心!?」  正真正銘の真剣で受け止めたはずなのに、マスケット銃には斬り込みが入るどころか刀身の方が折れそうだ。  いつも気だるげな現代っ子らしい鉄心の顔には、今でかつてないほど鬼気迫る表情が浮かんでいた。 「能力が使えないアンタらなんて、ただの特撮オタクと甘党でしかないでしょーが!ノーマルでなら、俺がまだ一番マシに戦える!」 「だけど、鉄心……!」 「義正さんッ!!!」  鉄心の悲痛な叫びに、彼の感情の全てが込められていた。  剣の達人である鉄心が、つばぜり合いのまま反撃もできずにいる。それが何を意味するか、分からない義正ではなかった。 「……撤退だ。行くぞ」 「ちょっ……本気で言ってんの義正!?」 「テッちゃん置いていっちゃうの……?」 「ゴチャゴチャうるせぇ!これは命令だ!!」  アテナも希音博士も、義正の怒号に気圧される。  そしてハラペーニョの面々はトメにより、戦場と化した焼け跡から離脱していった。  鉄心一人を、ただ残して。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!