4話:襲来!ブラッディ・マスケット!

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 重量過多になりつつも、トメは両足のジェットブースターで飛行していった。  焼け跡の上空から伸びる飛行機雲を見上げることもなく、鉄心は大きく後ろに飛び退いた。ブラッディ・マスケットと距離を取り、一度呼吸を整える。 「まったく……。何なんすかねあの人達は。アルバイトの代わりなんて、いくらでもいるでしょうに……」  不意に口を突いて出た言葉に、鉄心は自分でも驚いた。  同じ能力を持った人間は世界に二人といない。組織にとって、義正とアテナは欠かすことのできない存在。  だから捨て石になるなら、ただのバイトで能力も持たない自分だと。――自分がそんな発想をするとは、思っていなかった。他人のための自己犠牲も残業も、何より嫌う性質だったのに。  そして何より、『捨て石』になるのが前提の――自らの死が決まりきっているかのような、自分の言葉に驚いた。 「……まぁ、給料分は働きますよ。アンタが俺らに何の恨みがあるか知らないけど……。アンタがウチの師匠(ジジイ)より強くなければ、何とかなるっしょ」  スーツの袖を捲り上げ、オシャレ眼鏡の位置も直し、鉄心は気合を入れる。金色の長い前髪の隙間から、ブラッディ・マスケットを捉える。  眼前のエコテロリストの襲撃理由はどうせ、トーチマンとの戦いで森が燃えたと勘違いしたことによる怒りだろう。  たとえ義正達の能力を封じようとも、すぐに博士が対抗策を練ってくれる。故にそれまで、時間を稼ぐ。  鉄心は自分のやるべきことを認識し、一秒でも長くこの場に留まることを決意した。 「山元一刀流宗家、山元鉄心……!推して参る、なんつってね!!」  唸りを上げ、鉄心の日本刀が振り翳された。 「愚かな神の産み落とした廃棄物が……。土へと還れ……!青き惑星を、これ以上汚すな……!!」
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