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◇
――暗い、森の中。
人工の光は無く、巨大な月と幾千の星々が僅かな光を照らしている。
「――ぁ゛……っ゛?」
不意に、腹部に痛みを感じた。
下した、などとそんな生易しいものじゃない。
肉を穿たれ、臓腑を吹き飛ばされた――“視界の一部が黒く焦げる痛み”。
音の無い殺意の弾丸。
――また……どこから……?
人影は視界の悪さ、薄暗さも相俟って視認できない。
だが、間違いなく俺は、誰かの“射程内”に居る。
――逃げねば。
「――っ゛、ぐっ!」
身体が動く内に、少しでも遠くへ。
反撃は二の次に。
兎に角逃げ切らねば、この狩猟は、ハンターが飽きるまで繰り返される。
一歩、また一歩。
生き延びる為に。
「――っ、そ。何だってんだ……っ!」
唸り、奥歯を噛みしめる。
腹部の穴は塞がれ、視界も晴れた。
痛みは消え――反撃のチャンス。
腰に刀の様に差したアサルトライフル【AK‐47】に手を伸ばす。
残弾数が中途半端な弾倉を、リロードし、大きく息をつく。
このまま隠れていては、いずれ見つかり――殺される。
ならば、
「派手に、行こうか!」
小さく笑い、俺は木の陰から飛び出した。
敵の凡その方向程度は何とか掴んだ。
狙いを定めさせない様に、ジグザグに緩急をつけ、遮蔽物に隠れながら距離を詰める。
上手く近づき、コイツ(AK‐47)の射程に入れば、俺にもワンチャン程度はある筈だ。
そう――筈だった。
俺の技術(スキル)が相応ならば。
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