『1』

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◇ 「――何だこのクソゲー……」 自室のベットの上。 俺は、シミジミと心の底から呟いた。 ゴーグル状のコードレス端末を乱暴に外して、枕元に放り投げる。 気付けば、日は完全に落ちていた。 カーテンは開けっ広げていた筈だが、ちゃんと閉められ、常夜灯が付けられている。 どうやら、妹が気を利かせてくれたらしい。 小さな気遣いに、理不尽なPK(プレーヤーキル)への憤りが、冷めていく。 ……――世界は、大きく変化した。 22世紀後半まで人類はしぶとく生き残った。 21世紀初頭に比べれば、技術は大きく進歩しただろう。 当時の人間の夢だった直立二足歩行兵器が荒野を駆け、レーザー光線を水鉄砲よろしくお手軽にぶっ放せる様にも、気軽に月や火星に買い物が出来る様に――残念ながら成って居ない。 地球という星の隅々まで調査、開拓が進んでも、人に成せない事は少なからずあった。 だが、世界に革新的な変化は確かにあった。 『拡張現実(オーバーリアリズム)』 例えば、Mサイズの卵程度の端末に、通話やメール、パソコンなどで出来た諸々の機能を搭載し、かつ、ホログラム(立体)化したタッチ対応のディスプレイ――【デヴァイス】。 それが、かつての【スマホ】と呼ばれる旧世代端末の代わりに、一人に一つは普及している。 更には、人は電子の世界に新たに世界を創り上げた。 イメージするなら、21世紀初頭の小説家が書いたSFまたはファンタジー小説だろう。 “ゲームの中に入って(フルダイブ)、実際に冒険する”……という、使い古されたテーマ。 2192年現在の今日(こんにち)。 複数の企業が合併した超大型企業が安心、安全をモットーに、『電脳世界エデン』を24時間365日、年中無休でサービスを提供してたりする。 かつての人々が見たら、きっと夢の様なファンタジーな世界観だと思う。 しかし、現在に生きる身としては、「別に」……である。
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