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俺が先ほど、までダイブしていた世界は――【シュトゥルムゲヴェーア】。
ドイツ語で、“アサルトライフルの意”を持ったその世界は、そのまま、銃の世界だ。
しかし、“運営公式の正規世界”とは異なる謂わば、“裏世界”。
『剣と魔法モノ』『サバイバルモノ』『恋愛シュミレーションモノ』『推理モノ』などなど様々な“世界”を管理しているが、広大過ぎると、その管理にも限界がある。
刺激を求めたハッカー達が創った模造世界(イミテーション・ワールド)。
大手タイトルに隠れる様に、ひっそりと、だが、確実に“遊びの幅”を持たせたソレは、人気を博している。
理由は、正規には無い現実感(リアリティ)。
通常、脳への疲労などの負荷を減らす為に、感覚を鈍く設定している。
例えば、剣と剣で戦っている時に、相手に斬られたとする――すると、痛みを感じるのではなく、“何かが優しく触れた”様に脳が理解し、体感するのだ。
HPが続く限り、毒沼トラップで、途方に暮れるプレーヤーの姿は、滑稽ではある。
しかし……そんなものに“俺達”は飽き飽きなのだ。
よりリアルに、よりスピーディーに、よりエキサイティングに、よりデンジャラスに――欲求を求めればキリがない。
些か人格に異常があるのではないか……と思うが、割りとこういう人種は、現代社会に多いらしい。
故に、“エイム・リロードを含めたキャラクター行動へのシステムアシストの徹底排除”と“脳負荷ギリギリ設定の痛み”が売りの【シュトゥルムゲヴェーア(銃の世界)】は多くのゲーマーを魅了している。
――らしいのだが、
「俺、魅了されてねぇーんだけどな……」
ベットに座りつつ、やっぱ、ファンタジー系に戻そうか……と考えていると、
「――お兄ちゃーん! まだダイブしてるのー? ご飯だよー!」
一階のリビングから我が妹の良く通る声。
ダイブ中は、安全装置(セーフティ)として、一定の振動や音で、強制ログアウトする仕組みだが、今ので確実に起こされただろう。
「近所迷惑だってーの」
小さく笑いつつ、俺は重い脚を引きずりながら、階段を下りて行く。
…
……
………。
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