プロローグ

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◇ ――銃声が戦場(フィールド)に幾重にも重なっている。 遮蔽物から不用意に顔を出せば、いつクリティカル(ヘッドショット)を貰うか分からないだろう。 人が住めなくなった荒廃した街にある廃れたビルの屋上で少女――≪シオン≫が居た。 黒いセミショートの髪が渇いた風に靡き、鋭い眼差しの紅い瞳が、慌てふためくプレイヤー達を見下ろしている。 二十歳に僅かに満たない程度の、大人びながらも幼さが残る顔立ちだ。 体格は決して華奢という訳では無い。 身体のラインがくっきりと出る、バニーガールの様な黒と灰色のレオタードの上に、厚手の長袖の黒いジャケット。 スリットの入った丈の短い黒のズボン。 赤黒いニーソックスと厚底のゴツいブーツ。 全身が黒づくめ、ということで肌の白さがより際立っている。 発育は良い方だと、自身でも思うが、それでも全長905m 重量6,950g――そんな、物が吊り合う筈は無い。 セミオートマチック汎用狙撃銃【ワルサーWA2000】。 グリップと引き金より後ろに弾倉や機関部を配置したブルパップ式を採用している為に、角ばったような独特のシルエットで他の狙撃銃よりか幾分、小柄ではあるが、女性が水鉄砲よろしく振り回せるようなものでは無い。 それを、片膝を付いた状態で、自身の力だけで支えられるのは、彼女の【筋力】によるたまものだ。 本来、狙撃は、バイポット(支脚)を利用する依託射撃の方が安定するものだが、対象が複数点在し、常に移動している戦場では、取り回しが優先される。 彼女の【筋力】ならば、一戦交える程度なら構え続けても射撃精度が変動する事は無い。
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