プロローグ

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「――戦況は……少し、不利か……」 シオンは、WA2000のスコープでそれぞれの動きを把握する。 既に、全ての敵はスポット済み。 例え、壁の向こうだろうと、建物の中だろうとその動き(モーション)は頭上の名前もろとも目に見える。 寧ろ、遮蔽物越しの方が、白いシルエットとして表示させるので、見やすい程だ。 殆ど男性だが向こうにも、小柄の女性のショットガン持ちが居る――性別や体格は引き金を引くのに関係は無い。 今しがた、物陰に隠れながら敵陣の大柄の男が軽機関銃のリロードを終えた所だった。 「≪カズマ≫、 止まって。右の建物、ライトマシンガンが居る」 自陣は常時スポット状態が維持され味方は緑マーカー、敵は赤マーカーで区別されている。 【チームチャット】で一番近場の味方に知らせた直後、 「――っ!」 息を止め、引き金を引いた。 サプレッサー(消音機)で削れるだけ削った銃声が僅かに響く。 有効射程は凡そ1k、このフィールド内なら十分、網羅できる。 貫通力のあるフルメタルジャケット弾は、風化した壁程度は容易に貫き、男の頭部を吹き飛ばした。 一撃で【ヘルス】を“塗り潰され”、≪スラルド≫は地面に倒れ――霧散して掻き消えた。 『っ、ぶねぇ! シオンさん、サンキュー!』 カズマのチャットを聞きながら視界の“右端の円状グラフ”を確認する。 丁度、青が赤を喰い、比率は青に僅かに傾いた。 『おぉ! キタコレ! 逆転!!』 ≪ゲオルグ≫がアサルトライフルで応戦しながら、チャットを出した。 互いのチーム総合コストは、粗、均衡している。 極端な差が出ては、戦争に成らないが故の、この世界の調律。 だが、相手のバランスは余り良いとは言えなかった。 一人は、軽装備で固めたステルス特化型で、厄介には厄介だが、此方には、探索支援装備を積んだ仲間が居るので、奴の動きは筒抜けだ。 ステルス型の強みの一旦は、身軽さ(低コスト)にある。 凡そ、平均的な装備コストの半分程度で、火力不足に悩まされるが、チーム戦ではその分のコストが他者の力となる。 ソレが今回はスラルドの軽機関銃に寄ったようだ。
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