7人が本棚に入れています
本棚に追加
「――戦況は……少し、不利か……」
シオンは、WA2000のスコープでそれぞれの動きを把握する。
既に、全ての敵はスポット済み。
例え、壁の向こうだろうと、建物の中だろうとその動き(モーション)は頭上の名前もろとも目に見える。
寧ろ、遮蔽物越しの方が、白いシルエットとして表示させるので、見やすい程だ。
殆ど男性だが向こうにも、小柄の女性のショットガン持ちが居る――性別や体格は引き金を引くのに関係は無い。
今しがた、物陰に隠れながら敵陣の大柄の男が軽機関銃のリロードを終えた所だった。
「≪カズマ≫、 止まって。右の建物、ライトマシンガンが居る」
自陣は常時スポット状態が維持され味方は緑マーカー、敵は赤マーカーで区別されている。
【チームチャット】で一番近場の味方に知らせた直後、
「――っ!」
息を止め、引き金を引いた。
サプレッサー(消音機)で削れるだけ削った銃声が僅かに響く。
有効射程は凡そ1k、このフィールド内なら十分、網羅できる。
貫通力のあるフルメタルジャケット弾は、風化した壁程度は容易に貫き、男の頭部を吹き飛ばした。
一撃で【ヘルス】を“塗り潰され”、≪スラルド≫は地面に倒れ――霧散して掻き消えた。
『っ、ぶねぇ! シオンさん、サンキュー!』
カズマのチャットを聞きながら視界の“右端の円状グラフ”を確認する。
丁度、青が赤を喰い、比率は青に僅かに傾いた。
『おぉ! キタコレ! 逆転!!』
≪ゲオルグ≫がアサルトライフルで応戦しながら、チャットを出した。
互いのチーム総合コストは、粗、均衡している。
極端な差が出ては、戦争に成らないが故の、この世界の調律。
だが、相手のバランスは余り良いとは言えなかった。
一人は、軽装備で固めたステルス特化型で、厄介には厄介だが、此方には、探索支援装備を積んだ仲間が居るので、奴の動きは筒抜けだ。
ステルス型の強みの一旦は、身軽さ(低コスト)にある。
凡そ、平均的な装備コストの半分程度で、火力不足に悩まされるが、チーム戦ではその分のコストが他者の力となる。
ソレが今回はスラルドの軽機関銃に寄ったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!