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『――それにしても、流石、【漆黒の狼(ブラックウルフ)】。正確なスナイピングでしたね。あの……良ければ、ボクとバディ組んで貰いませんか?』
突然に、話を振られ、かつ、不名誉な二つ名にシオンは眉を顰めた。
確かに黒尽くめではあるが、コレは夜間でのステルス効果など実用性を追求した結果の事。
人の知らない所で、そんな男子が喜びそうなあだ名で盛り上がらないで欲しい。
小さく溜息をついてから、チャットをオープンにし、
「――ごめんなさい。私、決まった時間にIN出来ないから、バディとかギルドには入らないの……」
お決まりの文句で、チャットを終える。
ただ、それだけだというのに、両方の陣営が、わっ、と湧き立った。
アイドルが喋った――そんな感じなのだろうか?
「やっぱり、ソロ専門なんだ」とか「ちゃんとキャラ作ってんだ」とか好き勝手に言ってくれる。
――別にキャラをあだ名に寄せてる訳では無いのだ。
単に、人見知りなだけだったりする。
試合中ではスイッチが入るのか、気後れはしないのだが、終えると、地に戻ってしまう。
陽気に気の利いた事など言えない癖に、妙な沈黙の間がどうも苦手なのだ。
中途半端にバディを組んで、小一時間で解散とか、虚しい過去は胸にそっと仕舞いこむ。
“この世界”の中なのだから気にする事は無いのだが、性格というのはそう簡単には変えられない。
ざわつきが続く中、ようやく長いクールタイムが終り、マイルームに戻された。
タウンの中にある、自分専用の安全圏。
素っ気ない、マンションの一室のようなマイルームで、備え付け(デフォルメ)のベットに座り、先日、ドロップしたエネミーのデフォルメヌイグルミを抱きしめる。
人間を頭からバリバリといく、どこかの宇宙エイリアン染みた見た目はアレだが、これはこれで、中々触り心地が良い。
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