ピンポンダッシュ

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しばらく、失神して目覚めると、まだチャイムが鳴らされていた。 ただし、男の声がする。 「警察の者です。何かありましたか?あけてください。」 た、助かった。 私は、インターホンで警察官を確認すると、慌ててドアを開けた。 私は違和感を感じた。 何もないのだ。 そこには、横たわる隣の男性、もしくは、血溜まりができていてもおかしくないのだ。 玄関前は綺麗なものだった。何も痕跡は無い。あの頭のおかしな女も。 「あ、あのっ。お隣の男性は、無事ですか?うちの玄関前で刺されたんです。知らない女に!」 私は、今までの経緯を警察官に説明した。 だが、信じてはもらえなかった。 そこには何もないからだ。死体も、血溜まりも、そして、インターホンには、来訪を告げる点滅はあったが、あの女の姿は映っていなかった。 念のために、お隣さんを訪ねると、なんと、あの刺されたはずの男性が何事もなく部屋の中から出てきて、私の説明に怪訝な顔をし、苦笑いした。 私の見たものは、なんだったんだろう? 私は、警察や救急を騒がせた、迷惑な人間として扱われ、警察署でかなりの時間拘束された。 その翌日の夜、またチャイムが鳴らされた。 私は、恐る恐る、モニターを見る。 すると、隣の男性がモニターを覗き込んでいた。 「な、何か、ご用ですか?」 私がインターホンに答えると、その男はニヤリといやらしく笑った。 「ぴぃんぽぉんだーっしゅじゃあ、な~いよぉ~?」 ねっとりとした気持ちの悪い声。 嘘っ、女の声。 「ピンポンピンポンピンポン、ピピピンポピンポピンピポンピンポピンポ」 いやああああああああああ。
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