救世主

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倉本は、一度も振り向かないし、何も言わない。 私も引かれるがままに、歩くだけ。 視界に入るのは、大きくて広い背中。 何で倉本は助けてくれたんだろ? 何も言って無いし、何も知らないはず。 私が逃げ出したいって思ってた事なんて、知らないのに。 なんでこう、ピンチを助けてくれちゃうかな。 自由な左手で、倉本のスーツの裾をキュッと握った。 それにいち早く気付き、倉本は足を止める。 「…余計なお世話だった?」 「え?」 前を向いたまま、こっちを見ずに話す。 いま、倉本がどんな表情をしているのかは、わからない。
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