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彼氏は、霊感など全くないようで、僕
が憑りついたことなど全く感じていない
ようだった。世の中には、こういうタイ
プもいるのだ。だが、このぐらいでない
と、女は転がせないに決まっている。
だが、こういうタイプは、憑りついて
も意識をコントロールすることはできな
いと、さっきの冊子に書いてあった。
それでも感覚器官を同期して、僕が彼
の感覚を味わうことはできるのだという。
それはそれで有難い。
下手に童貞が意識をコントロールして
は、却っておかしな結果を呼ぶこともあ
りうる。この男の手練手管に乗っかって、
そのまま官能だけを味わえるなら、それ
に越したことはない。
そして渡りに船と言うべきか、彼氏は
彼女の体を抱き寄せてこう言った。
「な、ここで、さっきの続き、しようぜ」
「ええ? ここで? やだよ、暗いし、
汚ないじゃん」
「平気だよ。ちょっと、こういうヤバそう
なとこで、一回ヤッてみたかったんだよ」
そう言われた彼女の方も、満更嫌でもな
さそうで、好奇心を隠しきれない顔つきで、
部屋の中を見回した。
二人は、結局、この部屋の物音は猫の仕
業だと決めつけて、すっかり安心し、今は
また不埒な好奇心に体の芯をうづかせてい
るが、僕は、さっきの猫が実はこの部屋で
死んだ野良猫の浮遊霊であることを知って
いるので、つくづく人間なんて、目の前の
理屈がそろえば本当のことなんてどうでも
良いのだと気が付いた。
こういうことを生きている間に学んでい
れば、もう少し生きやすかったかもしれな
いが、もう、それは全て後の祭りだ。
ともかく・・・。
彼氏は、懐中電灯を流しの脇に置いて、
強引に彼女の体を引き寄せて唇を奪った。
彼女の方も、すぐに応じて互いの舌と舌で
口の中を舐め合った。僕は、生まれて初め
て女の人とキスをして、そのあまりの感触
に陶然となった。キスでこれだけウットリ
できるなら、その先はどんな快楽が待って
いるのか! あのいつも観ていたAV男優
たちは、果たして、一体いかなる快感を日
夜享受していたのか!
僕は、序盤で果てそうになるのを必死で
堪えた。
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