小噺(こばなし)・引越しそば妄騒記(もうそうき)

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「そば、じゃ」 「そ、そばーっ!?」全員が声を揃えて絶叫。 「そう。ジェローン様を亡き者にしようとした犯人は、彼の体質『そばアレルゲ』をよく知っており、彼の食事に細工が出来る者。  つまりは、ご夫人。あなたということになるのだ!!」  イザベラ、一瞬固まるがすぐに冷たい笑顔に豹変。 「なーにゆってんのよー!?  あの人は、ソバなんて食べなかったわよ。  だって、蛇入りのパスタとか言って、全然口つけなかったもの」 「いや、確かにジェローン氏はそばを食していないであろう。  だがな、そばの粉だけでも十分に猛毒となりうる。そう、あのクレープはただのクレープではない。  そば粉のクレープ『ガレット』なのじゃ!!」 「え、ええええええええっ!?」庄三郎、伊右衛門絶叫。 「そ、そうだ。イザベラ、君は僕の遺産目当てに、僕が幼い頃『ガレット』で体調崩したことを知って、そばアレルゲを悪用した殺人計画を実行したんだね?」  ジェローン氏は、泣きはらして痩けた顔で夫人に対峙する。 「な、何の証拠があって……」 「今、君が飲んでいる紅茶には、猛毒が入っている。  陳先生が煎じた清国の毒キノコの粉末だよ。フフフフフフ」  ジェローン氏は、泣きながら笑い、幽霊さながら。
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