小噺(こばなし)・引越しそば妄騒記(もうそうき)

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「オー! ここがジャポン(日本)なのですねー」 「ジェローン、何をビクビクしてるの?  私たち夫婦は、オランダの国家を代表して、この小さな東洋の島国に乗り込むのよ。  ほら、見てごらんなさい。  どの男たちも、まるで子供ほどの背丈しかないわ。  腰に差してるサーベルだって、最近ではこけ脅しで、滅多に抜かれることもないそうじゃない。  あなた、祖国では紅茶と陶器の輸出で巨万の富を得たのに、こんなイエロー〇〇〇〇(伏字)ごときに舐められるんじゃないわよ!」 「オ、オオー……分かってるよー」  古今東西、恐妻家というのは肩身が狭いもんでござんす。  今、長崎は出島に入港した貿易船から降り立ったのは、東インド会社の仲介貿易で財を成した、ジェローン氏とご婦人・イザベラ嬢。  一回りも歳下の細君に叱られ、しょんぼりジェローン氏は、齢(よわい)四十五歳。  お二方とも、初めてのジャポンと相成りますー。
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