小噺(こばなし)・引越しそば妄騒記(もうそうき)

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 意外や意外。出島は西欧風の建築スタイルの洋館がひしめき合って、しかも行き交う人々の中には、結構な数の西洋人もいるではあーりませんか。 「ホホウ。ジャポネーゼは、なかなか都市づくりが巧みですねー」  まるで建物探訪にいらした様な佇まいのジェローン氏、屋根瓦の一枚一枚にも注意深く目を凝らしておりやす。 「和洋折衷。いい仕事してますねー」 「ハロウ!」「ボンジョルノ!」「ボンジュール!」「ニイハオ!」 「あ、いやまたこりゃ、どーも!」  聴こえてくるのは、わあるどわいどなご挨拶。 「ジェローンさん、お迎えに上がりました」  深々とお辞儀なさるるは、幕府の通訳・伊勢崎権左衛門(いせざきごんざえもん)殿。 「おお! ドーモ、ドーモ。ヨロシクー」  ジェローン氏、貿易商だけあって日本語も堪能。これには伊勢崎殿もびっくり仰天。 「か、かたじけない! 拙者、伊勢崎権左衛門と申す」 「じゃあ、略して伊右衛門(いえもん)で良くって?」  イザベル嬢の含み笑い!!  お分かりかも知れませぬが、さっきのペエジで伏字にした「日本人の蔑称」とあ、悲しいかなダブル・ミーニングううううう!! 
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